動的な官能評価手法 – TDSとは?

美食や文化の街として知られるフランス中部の都市、ディジョン。官能評価手法の1つ、TDS(Temporal Dominance of Sensations)は、2000年代にディジョンで開発された手法です。官能評価ソフトウェア FIZZのメーカーBiosystemes社は、Dr. Pascal SchlichらによるTDSの研究に貢献しています。

TDSは、複数の感覚を同時に時系列で評価することが可能な動的手法です。パネリストに属性リスト(複数のディスクリプタ)を提示し、テイスティングを通して「最も注意を惹く支配的な(=dominant)」属性を、時間をかけて選んでもらうというものです。

プロファイリング法などの古典的な官能評価手法は、静的な判断に基づきます。パネリストは試験のなかで各ディスクリプタを評価し、時間の経過とともに判断を修正することはできません。そのため、時間的な感覚が大きく異なる製品を、この静的な尺度では近いものと見なしてしまう可能性があるのです。

動的手法であるTDSを用いて官能評価を実施するにあたり、パネリストのトレーニングは必要ありません。評価の際に提示するディスクリプタをどの消費者も同じように使用できるよう、明確にする必要があるだけです。

TDS評価画面の例

各ディスクリプタの優位率は、任意の時間に該当するディスクリプタをクリックした被験者の割合として算出されます。このように、TDSは「ドミナンスカーブ」で表現することで、テイスティング時の全体的な時間情報を得ることができます。従来のプロファイル法では必ずしも表されないような製品間の差異を強調することができるのです。

TDS曲線の例

当社は、ディジョンに拠点におくSensoStat社と提携し、欧州のパネルを使った官能評価・消費者試験サービスを国内のお客様に提供しています。そのSensoStat社のクライアントの例ですが、似たようなプロファイルをもつシリアルバーの自社製品と競合他社製品の何が違うのかと悩んでいたところ、TDSで実施した動的評価のおかげで、競合製品とは異なり、自社製品には消費者に好まれない苦味の支配が持続することが判明し、改善に繋げることができたそうです。

TDSは現在、官能分析で非常によく使われている手法です。競合製品との差別化だけでなく、原料や製造工程の変更時にも有用です。また、この時系列官能評価手法は、口にする食品に限らず、化粧品やヘルスケア製品など様々な消費財に応用され始めています。


TDS関連文献

Pineau, N., Schlich, P., Cordelle, S., Mathonnière, C., Issanchou, S., Imbert, A., et al. (2009). Temporal Dominance of Sensations: Construction of the TDS curves and comparison with time–intensity. Food Quality and Preference, 20(6), 450-455.