発酵が苦味を和らげる?―電子味覚システムで捉えた杜仲茶の味の変化

食品の発酵は、保存性や栄養価だけでなく、味や香りにも大きな変化をもたらします。特に茶飲料では、発酵に伴う苦味や渋味の変化が、製品の品質や嗜好性を左右する重要な要素となります。

2026年、中国の華南理工大学を中心とする研究グループが、学術誌 Food Chemistry: X に、杜仲茶(トチュウ茶)の発酵過程におけるフラボノイドの変化と苦味の低減に関する論文を発表しました。この研究では、発酵に伴う味覚特性と成分の変化を調べるため、Alpha MOSの電子味覚システム Astree が使用されています。

電子味覚システムで発酵による味の変化を評価

研究では、発酵度の異なる杜仲茶について、Astreeによる味覚評価と、メタボロミクス解析などを組み合わせた分析が行われました。

電子味覚システムによる測定では、発酵が進むにつれて特定のセンサー応答が低下し、官能評価との比較では、苦味との高い相関(r = 0.89)が認められました。一方で、酸味やうま味に関連するセンサー応答は増加する傾向にありました。

これらすべてのデータを主成分分析(PCA)することにより、発酵段階による味覚特性の違いが明瞭となり、味の変化を客観的に捉える電子味覚システムの有用性が示されています。

苦味の低減に関わる成分変化

メタボロミクス解析では、発酵に伴ってフラボノイドの組成や含有量が変化することが確認されました。さらに、分子ドッキング解析によって、特定のフラボノイドと苦味受容体との相互作用が検討され、これらの成分変化が苦味の低減に関与している可能性が示唆されました。

今回の研究は、電子味覚システムによる味覚評価と成分分析を組み合わせることで、発酵による食品の品質変化を多角的に捉えられることを示す事例といえます。


参考文献

Integrated metabolomics and molecular docking reveal fermentation-dependent flavonoid transformation and bitterness attenuation in Eucommia ulmoides dark tea
Jinfeng Zhou et al.
Food Chemistry: X, 38, 104231 (2026)