水道水の品質管理では、安全性に関わる水質項目だけでなく、利用者が感じる「味」も重要な要素です。しかし、味は複数の成分が影響し合うため、従来の理化学分析だけでは捉えにくい場合があります。
2026年、学術誌 Water に、韓国建設技術研究院(KICT)などの研究グループによる、飲料水の味の変化を数値化し、浄水処理工程の監視や異常検知への応用を検討した研究が発表されました。
この研究では、Alpha MOSの電子味覚システム Astree が使用されています。
7本のセンサーから「味の指標」を構築
研究では、Astree に搭載された7本のセンサーから得られる応答データを利用し、主成分分析(PCA)やPLS-DAなどの多変量解析によって、浄水処理工程や採水地点によるセンサー応答の違い、各センサーの寄与度などが評価されました。
さらに、飲料水の味に関する指標「Taste Index(TI)」が構築されました。TIは、基準となる浄水のセンサー応答パターンからの違いを数値化したもので、値が大きいほど基準水との味に関連する特性の差が大きいことを示します。
これにより、複数のセンサーから得られる情報を一つの指標として表し、浄水処理工程や配水網における水質変化を比較する方法が提案されました。
浄水処理工程での味の変化を可視化
実際の浄水場で採取した水を分析した結果、浄水処理が進むにつれてTIは全体的に低下しましたが、オゾン処理後には一時的な上昇が確認されました。また、配水網の16地点で採取した水のうち、TIが高かった5地点は、過去に味やにおいなどの水質上の懸念が報告されていた地域と一致しました。
味覚データを工程管理に活用する新たな可能性
研究では、市販のミネラルウォーター11種類についてもTIによる評価が行われ、ミネラル組成の違いに関連するセンサー応答の差が確認されました。
これらの結果から、電子味覚システムによる味の数値化が、浄水処理工程での水質変化の把握や、配水網における異常検知に役立つ可能性が示されました。
今回提案されたTIは、従来の理化学分析を置き換えるものではなく、味に関連する水質変化を捉える補完的な指標として期待されます。ただし、実際の連続監視や自動制御への応用には、さらなる検証が必要とされています。
参考文献
Development of an Electronic Tongue-Based Taste Index for Process Monitoring and Anomaly Detection in Drinking Water Treatment
Juwon Lee et al.
Water, 18(11), 1305 (2026)
