「選ばれる」から「選ばれ続ける」へ ― 購買の流れを丸ごと再現する研究プロジェクト「PrediChoice」

植物性たんぱく、発酵、細胞培養など、サステナビリティや健康に配慮した新しい食品が次々と登場しています。一方で、新商品の50〜75%は毎年市場から姿を消すとも言われ、「官能評価では好評だったのに、店頭では売れなかった」という経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。

フランスの官能評価・統計解析会社SensoStat社が、CSGA(味覚・摂取行動科学研究センター)と共同で進める研究プロジェクト「PrediChoice」は、こうしたギャップに正面から向き合うものです。購買行動をより正確に予測するための新しい評価の枠組みを、今後数年をかけて開発・検証していく計画です。

「一度きりの評価」では見えないもの

食品の受容性を調べる方法には、官能評価、実験経済学、アンケート調査、購買データの分析などがあります。官能評価は「おいしさ」を捉えるゴールドスタンダードですが、管理された環境で製品だけを切り離して評価するため、実際の購買場面とは距離があります。アンケートでは「買うつもり」と「実際に買う」が一致しないことも珍しくなく、購買データは「なぜ選んだのか」までは教えてくれません。

研究チームが指摘するのは、これらの手法がそれぞれ必要だが十分ではないこと、そして多くの場合、消費者行動の一場面だけを切り取っている点です。実際の消費者は、商品を見て期待し、選び、食べ、満足すればまた買い、満足しなければ別の商品に乗り換えます。購買行動は、経験とともに好みが更新されていく動的なプロセスなのです。

購買の流れを3つのステップで再現する

プロジェクト最初の実験では、商品との出会いから購入までを次の3段階で再現しています。

1. 出会う(自宅)
ネットスーパーで買い物をするように、パッケージ、価格、原材料表示などの情報だけを見て商品を比べます。試食はせず、買いたい順に順位を付け、選んだ理由と「おいしそうだと思う度合い」を答えます。
2. 食べて比べる(ラボ)
個別ブースで、自分が選んだ商品から試食を始めます。2品ずつ比べることを繰り返し、一番好きな商品を絞り込みます。中心にある問いは、「食べる前に一番魅力的だった商品は、食べた後も一番好きか」です。
3. 買う(ラボ)
一定額のバウチャーを受け取り、商品を1つ購入します。参加者には知らせずに決めておいた1品を選んだ人だけが、実際にその商品と残額を受け取り、それ以外を選んだ人はバウチャーを満額で受け取ります。どの選択も本当の買い物になり得るため、本音の好みと価格感覚が選択に表れる、という工夫です。

「最初に選ばれる商品」と「選ばれ続ける商品」は違う

この設計で見えてくるのは、段階ごとに商品がどれだけ「生き残るか」です。パッケージや表示で期待を高めすぎた商品は、試食後に失速するかもしれません。逆に、店頭では目立たなくても、食べれば選ばれる商品もあるはずです。研究チームは、各商品が選ばれ、繰り返し選ばれる確率を算出し、将来的には実際の市場シェアとも照らし合わせる計画です。

期待と体験のズレを段階ごとに捉えられれば、パッケージや訴求の見直し、処方改良の優先順位付けといった具体的な判断に結びつけやすくなります。

PrediChoiceは、官能評価、消費者調査、実験経済学といった、これまで別々に扱われがちだった手法を、一つの購買の流れの中でつなぎ直す試みです。狙いは各要素がどう影響し合うかを理解することにあります。現在はまだ探索段階ですが、「おいしいか」だけでなく「選ばれ、選ばれ続けるか」を問う視点は、新しい食品の開発や市場投入を考えるうえで大いに参考になるのではないでしょうか。

当社アルファ・モス・ジャパンでも、官能評価の結果を実際の消費者行動につなげていく、こうした新しいアプローチの動向に引き続き注目していきたいと思います。


引用

本記事は、SensoStat社のニュース記事PrediChoice: Can we better predict purchasing behaviour? SensoStat Newsletter No. 59を参照して構成しています。