機器分析手法をどのように製品開発のプロセスに活かしますか?

消費者視点からの製品開発セミナー」(2015/6/5開催)には、多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。製品の官能的特徴に加え、消費者のもつイメージの調査の仕方、それらを複合的に解釈、まとめる手法についてフォーカスしたものでした。

さて、分析型のパネル、または消費者を用いて製品の評価をすることは、製品開発プロセスにおいて欠くことができないステップであるのは間違いないのですが、その頻度には限界があります。試験する人の問題(時間や感覚疲労)、それにコストの問題です。辛いものや苦いもの、あるいは臭いものをどれだけ継続的かつ客観的に評価できるでしょうか?

そこで、機器分析手法がスクリーニングに役立ちます。ヒトの知覚がいかに複雑に作用するかは、これまでのブログに書いてきました。機器分析(センサーなど)の単一データが、ひとつの属性を直接的に表現できるに越したことはないですが、単純な系では容易であったとしても、原料、プロセスが変わることで、その因果関係が常に維持されるとは限りません。

たとえば、水溶液中のショ糖濃度が増えれば、感覚的に甘さは増え、その結果は溶液の粘性値とも高い相関を示します。しかし、これは限定した系での単相関であり、外観やほかの特性が変化することで、解釈に誤解が生じます。

では、どのように機器分析データを使ったらよいか・・・。
多変量データによる相関です。サンプル選択の際は、競合品などを加えて、できるだけ差があるものを用意します。記述型の官能評価や嗜好調査を行った15サンプルくらいが理想です。それによって、多感覚器分析システム(外観、香り、風味、食感・・・)による分析値と重回帰分析にて相関モデルが
構築され、特定の評価用語に対してキーとなる化学成分、物性値の組み合わせも分かります。

どのような感覚がどのような分析値と相関があるか、また感覚の相互作用がどのようにあるかが、はっきりしない段階では、できるだけ多くのモダリティに関するデータを扱うことが大切です。ひとつの属性Yを予測する回帰モデルであれば次のようになります。

たとえば、赤ワインの「苦味」を予測する重回帰分析を行うと、電子味覚システムの1つのセンサーの応答値、高速GCにより定量されたエタノール量、そして色(a値)がモデルに貢献していることが明確となります。

トライアル・アンド・エラーのプロセスにおける最終判断はヒトですが、それでも多くの試作品や開発品の中で、最適な解を得るために、機器分析をうまく使いこなしてみると、製品の開発スピードが上がり、開発フェーズの意思決定に役立ちます。